監査のいろは「監査の重要性って?」

監査には「重要性」という概念があります。

税金の世界には基本的に「重要性」という概念はなく、1円でも間違ってはダメなのですが、監査において「重要性」という概念がなぜ生じたかというと、税金の世界が、申告書に基づく納税によって会計に基づいて直接的にお金が動くのに対し、監査の場合、特に法定監査においては、会社法に戻づく監査では債権者保護を目的があり、金融商品取引法に基づく監査では投資家の保護を目的に基づいて、会計をチェックするのが監査ということになります。ここでチェック対象となる会計情報によって、直接的にお金が動くかというと動きません。債権者(金融機関)などの企業に貸し出しを行う人は、会計情報を利用するときに1円まで精緻に会計情報が合っている必要性を求めないですし、上場会社に出資する投資家も、株を購入する際に、会計情報に基づいて作成される有価証券報告書を参考にするかもしれませんが、そもそも有価証券報告書で1円単位で基本的に作成されておりません。1円単位での精緻な情報まで求められないからです。

さて、では監査において「重要性」ってどのように決定されるのでしょうか。あくまでも一般的な話になりますが、一番多いのは、税引前利益に一定の係数を乗じた数値を「重要性の基準値」とする方法になります。この金額を超えるエラーがある場合には、原則としてその財務諸表が適正に作成されていると監査人として意見が表明できなくなる数値になります。ほかにも、総資産、各段階損益、売上高などをメルクマールにして「重要性の基準値」を算定します。上場会社の場合には、一般的には、税引前利益を利用することが多いです。売上高などを利用するケースは商社などの限られた業種に限定されるケースが多いです。会社法の監査の会社においては、比較的自由にベースとなるメルクマールを選ぶことができます。一つの指標だけではなく、複数の指標を組み合わせるケースも時々あります。

各メルクマールに対して、係数を乗じて「重要性」は決定されますが、利益を基準とする場合には、3%~5%のケースが多く、売上高や総資産を用いる場合には、0.5%~1%のケースが多いように思われます。このあたりの決定の仕方というのは、実は公表されている実務指針に記載をされております。係数を大きくできる場合や小さくした方が良い場合などの例示も記載されています。監査を受ける立場だと、自分の企業の重要性がだいたいどれくらいなのかというのが気になりますよね~。だいたいの試算はできるんですよー!