監査手続のいろは「税金調書」

税金の調書は、税効果を除き、不正リスクなどはあまりない科目だと思いますので不正を見落とすなどの可能性はあまりないかと思いますが、一度も作ったことがないと全く手出しができない最難関の1つである科目調書になります。他の科目と同じようにリードで各勘定科目(未払法人税、未収法人税、未収消費税、未払消費税、未払事業税、未払事業所税、繰延税金資産、繰延税金負債、PL法人税住民税及び事業税、PL法人税等調整額、PL租税公課など)の増減分析をします。税金科目の増減理由は、正直何とも言えない場合が多いですよね。

リードの下に来るのが、未払法人税等の勘定科目分析になります。これがちょっと作るのが難しいですね。横軸が、前期末残高、中間納付、当期PL計上額、当期末残高というような感じになります。縦軸が、法人税、事業税、住民税になりますが、事業税の外形部分は、PL租税公課になります。この表は、還付がある場合など、様々なパターンがあるので、注意が必要です。リードとの間に元帳を噛ませると、繋ぎやすいと思います。

未払法人税等の勘定分析の下に来るのが、申告書や税効果の基礎資料となります。申告書は、よく知らない人がいるのですが、監査の段階での申告書は、実際に申告する際の申告書とは異なるドラフトであることが多いです。一般に、上場会社は、申告期限を3か月に延長しており監査を見る段階では、会計も固まっていないし、ドラフトの申告書ということになります。また、これも時々知らない人がいますが、申告期限を3か月に延長をしても、納付は2か月以内に行わないといけません。そのため、納付は若干多めに行うということがあります。それにより、所謂クッションというものが発生することがありますが、最近は、あまりクッションがある会社を見なくなったような気がします。クッションは当然ですが、大きすぎると監査差異になります。

会計監査で、別表4を精査して膨大な時間をかける人がいますが、個人的には、別表4の精査はいらないように考えております。ただし、別表4を税理士さんが間違って作成すると、大きなエラーにつながる可能性はあるので、大きなところは押さえる必要があります。匙加減が難しいところですね。また、会社の経理全体を把握し、調整漏れがないことを意識して確認することで、調整漏れの有無を確認できると思います。

別表5は税務と会計の差異の明細なので、税効果に直接的に影響します。きちんと別表5が税効果計算シートに反映されているかどうかを確認する必要があります。税効果については、一番重要になるのは分類です。ただ、分類は、税金担当者の判断というよりは、パートナーの判断になると思います。しっかり根拠を持って、パートナーの判断を仰ぎましょう。

なお、期中に、納付書とのチェックを終わらせておくと期末の手続きが楽になります。

また、税率分析はきっちりやる必要があります。逆に言うと税率分析がうまく行くと安心感が出ます。ただし、調整漏れやネット等で誤って税率分析の結果が問題なしとする可能性もあり、万能とは言えないと個人的には思います。