上場準備(IPO)時のよくある会計処理修正「経過勘定のミス」

上場支援作業において、注意を要する上場準備会社における社会保険に係る経過勘定の処理ミスについてですが、このミスは本当に多いです。特に、労働保険関係の処理は、間違って処理していることが多く、概算払いの前払分を消さずに、実績の会社負担未払分(従業員負担の預り分)と両建てになっていることが良くあります。無理やり実績分の経過勘定を消すことにより、前払労働保険料が積み重なり、費用処理されることなく、BSに積みあがっているという会社も拝見したことがあります。

ちなみに、一般的なあるべき処理としては、一定要件を満たす場合は、7月、10月、1月の3回に渡って、前年の納付ベースで概算払いを行います(原則は6月1日から7月10日までに一括)。なお、この払い月は時々というか割とよく変更されます。この概算払い分について、前払費用として処理するのが一般的です。

次に、毎月の給料に料率を乗じた会社負担分が実績として法定福利費として計上される。この時に会社負担分は、一般に前払費用を取り崩すことなく、未払費用等の科目で計上され、従業員負担分は、預り金勘定で計上される。そのうえで、決算月には、上記の前払費用、預り金、未払費用をネットし、残高がいずれかの貸借対照表科目で計上されることになります。

労働保険以外の健康保険等の社会保険についても、会社負担分を未払い計上、法定福利費で処理し、従業員負担分を預り金で処理し、納付時に経過勘定を消しますが、説明不明な残高が残っていることがあります。

これらの社会保険料の処理は、結構よく間違っていて、過去からのエラーの累積が見つかるところです。

上場支援作業において注意を要する給与の未払いの経過勘定の未計上についてですが、非上場の場合、税理士の作業ボリュームを削減する便宜上、期中は現金主義、期末で発生主義に組み替えるということが良くあります。そのため、当月末締め、当月25日払いの給与サイトの会社の場合、基本給部分はキャッシュアウトがあるので、損益計算書に計上されますが、残業代等の部分については、キャッシュアウトがないため、本来的には未払給与を計上する必要があるのですが、翌月に損益計算書に計上されているということが良くあります。上場準備(IPO)に当たり、残業代の支払いが厳格に行われることが求められると、思わぬ給与手当の計上月ズレが多額に発生することになることがあり、決して難しい話ではないですが、注意が必要となります。

もし、給与の支払いが当月末締め、翌月5日払いのような会社がある場合にキャッシュベースで費用を計上していると、残業代のみではなく基本給部分についても月ズレが発生している可能性があり、この場合もっと金額的な影響が出る場合があります。