上場準備(IPO)時のよくある会計処理修正「貸倒引当金」

上場支援作業において、注意するべき事項として、貸倒引当金の設定が税法ベースになっているということは、IPOを目指す上場準備会社の初期の段階では、ほぼすべての会社といって良いくらい、よくある事項です。上場を考えなければ、税理士としては、税務と会計が一致している方が負担がないですから当然といえば、当然ですよね。税務と会計では、同じ3期間分を用いて実積率を算定するにしても、用いる期が異なることになります。理論的には、会計で用いる期が妥当なように思われます。税務は、課税の公平が主眼となるため、適正な期間損益計算とは、異なる処理をおこなうことがしばしばあります。

そういえば、税法改正によって、所謂、大会社は、一般・個別とも貸倒引当金を損金算入できなくなりますよね。実質的に、法的に貸倒が確定するまでは、損金算入ができないため、適切に債権管理をする必要がありますね。

ところで、貸倒実績率の算定期間において、貸倒実績がないということがたまにありますが、この場合は、無理やり税法ベースで貸倒引当金を計上したり、最も近い貸倒実績を利用したりするケースがありますが、個人的には、無理やり貸倒引当金を計上する必要性はないと思います。確かに、金融商品会計実務指針Q&AのQ40においては、算定期間においてゼロだからといって、安易にゼロとしてはいけないように記載がありますが、特に、過去の最も近い貸倒れを実積率に反映させる方法の場合は、直近がそこそこ昔で、金額的に大きな貸倒れが発生した場合に、貸倒実績率を大きく歪めることになります。このような場合を考えると、直近の貸倒を無理やり用いるのは、問題とも考えられます。