上場準備(IPO)時のよくある会計処理修正一覧

IPOを目指す会社で良く見かける会計処理の修正があります。上場準備会社においては、下記のような要修正事項を直さないといけないですね!基本的に税法ベースの処理を金融商品取引法(金商法)ベースに直し、税務との差異は、別表で調整する必要があります。

では、なぜ、このような修正が多く発生するのでしょうか。上場を考えなければ、会社は税法と会社法だけ考えれば良いことになります。上場を考えて初めて金融商品取引法を意識する必要が出るのです。金融商品取引法に基づく会計資料は、様々なルールが詳細に決められています。他方、税法や中小会社向けの会社法では、会計については、ある意味適当に処理をして、税務申告書を作成することになります。税理士が税務申告書だけを意識して会計資料を作成する場合には、なるべく税法と会計の違いをなくし、申告書上での調整を無くしたいため、会計特有のルールは基本的には無視することになります。会計特有の処理を無視して処理をしている場合、金融商品取引法で求められる会計特有のルールである下記のような項目が定番として修正を要する部分として明らかになってきます。ですが、その時点で、金融商品取引法に基づく会計のルールを無視した決算書が作成されていることが悪いというわけではないのです。それまでは、必要がなかったから無視していただけであって、必要がないにも関わらず、こだわって、会計資料を作成していたとするとそれはそれで無断に時間を浪費することになりその時間を税理士報酬として請求してしまうのであれば、クライアントの意向に沿わないことになる可能性が高く、むしろよろしくないことになるのではないかと思われます。

・残存預入期間が1年超の長期性預金が現預金に計上されている。

・棚卸資産の評価の基準の未適用。

・貸倒引当金の設定が税法ベースになっている。長期滞留債権が一般債権と同様の評価となっている。

・税務上の短期前払費用の特例の適用により、1年以内の前払費用が未計上となっている。費用が現金主義で計上されている。

・自社利用ソフトウェアや市場販売目的のソフトウェアが適切に計上されていない。計上されたソフトウェアが適切に評価されていない。

・オンバランスするべきリース資産、リース債務が簿外となっている。

・固定資産の減損会計の未適用。

・デリバティブ資産・負債を時価評価していない。

・債務超過や実質純資産額が50%以下となっている出資先に対する投資が出資額で評価されている。債務超過の貸付先に対する貸付金が額面金額でBSに計上されている。また、未収利息が継続して計上されている。

・税務上の繰延資産が計上されている。

・敷引きや礼金が資産計上されたり、税法上の期間で処理されたり、期間按分されずに費用処理されている。

・資産性のない商標権、特許権などが計上されている。

・外貨建債権債務の決算時の換算替えが行われていない。外貨建取引について決済差額を為替差損益として認識していない。また、外貨ベースの金額の把握を行っていないことなどに起因して、円ベースでの債権債務に過去の不明残が発生してしまっている。

・フリーレントがある場合に、キャッシュベースで費用処理している。

・借入金にワンイヤールールが適用されていない。

・税効果会計を適用していない。

・ARO(資産除去債務)を計上していない。

・社会保険に係る経過勘定の処理ミスが発生している。

・給与の未払いの未計上。

・各種引当金が計上されていない。

・退職給付会計の適用が、本来、原則法適用会社であるのに簡便法になっている。簿外年金資産や簿外退職給付債務が発生してしまっている。

・履行義務が完了する前段階で収益認識がされており、売上の期ズレが起きている。

・原価計算が行われていない。

・原価と販管費に入り繰りが起きている。

・財務損益項目やその他営業外項目が営業損益項目(売上、売上原価、販管費)で処理されている。

上場支援業務では、上記のような部分は定番として気をつけないといけないですね!

そして、例示列挙しただけで疲れ果ててきますね(笑)直すの大変だー・・・