監査手続のいろは「借入金」

監査のいろは

借入金の監査ってもしかすると一番簡単かもしれません。確認状で残高を確認するだけですよね。。 でも、簡単だけど、めっちゃ面倒な科目でもあります。金消契約書は全部コピーして目を通してコベナンツ条項がないかとか、財務制限条項がないか、担保がないかなどの確認をしないといけないし、会社が長短分類の借入金の本数がたくさんある場合には、これを返済予定表等に照らして、長短分類をして、増加減少の表も会社が作っていない場合には自分で作らなければなりません。これは、ホントに大変な作業になります。 簡単とはいえ、借入金の監査で注意しなければならない点が何点かあります。

まず、さきほど記載したように契約にコベナンツ条項や財務制限条項が付いていないかどうかを確認する必要があります。大手監査法人の監査を受けることが必須となっていたり、経営指標が一定の水準を下回った場合に、期限の利益を喪失して、返済をしないといけない旨の条項などがついているかどうかなどの確認です。私の監査経験では、クライアントが財務制限条項に抵触したケースを見たことがありませんが、業績が悪化したうえに、返済を迫られるとホント大変ですね。財務制限情報に抵触する場合には、企業の継続性について疑義が生じている可能性もあり、監査チームの監査としては、一気に重たくなります。そのため、財務制限情報への抵触の有無を監査チームにアナウンスすることは大変重要ですが、基本的には、科目担当者以外の人が気が付いていますよね。科目担当者にアナウンスしてくれないことがあるかもしれませんが、試されていると思うので注意が必要なんです。

また、借入金に関連するPL項目として支払利息がありますが、支払利息のオーバーオール手続きを行うケースがあります。現在の低金利時代では、重要性の基準値を上回るケースの方が少ないと思われ、そもそもオーバーオール手続きが不要となる場合があります。いらない手続きはやらないようにしないといけません。オーバーオール手続きをやる場合には、全体の期中平均残高を算定して、これに平均利率や加重平均利率等を乗じて推定利息を算定します。最初は、ざっくりと推定値を算定し、クリアできない場合はより詳細にロジックを組み立てて、推定値を算定します。私は、オーバーオール手続きってあまり好きではないですね。。利息のオーバーオール手続きでエラーが見つかることってまずないですよね。。。

そうそう、借入金の監査手続きを唯一ちょっと難しいのがシンジケートローンのフィー部分の会計処理ですよね。シンジケートローンについては、アレンジメントフィーやエージェントフィー、コミットメントフィーなどの特殊なフィーが発生します。アレンジメントフィーは融資団を組成するための手数料であり資金調達開始時にかかる初期費用になります。したがって、原則として組成完了時に費用処理で良いかと思います。エージェントフィーは、シンジケートローン関係の融資団とのやり取りなどの事務処理を行うことに関するフィーとなり、これは、事務処理発生時に費用処理することになります。コミットメントフィーは、契約した期間、融資枠内にて融資を行うことを金融機関がコミットすること対して発生するフィーとなります。コミットメント・フィーの会計処理については、金融商品会計に関する実務指針139において、期末に発生主義に基づき当期に対応する部分を支払手数料として費用に計上すると明示されています。

また、借入金の長短借入金の残高は、会社の安全性を見るうえで非常に重要になります。現預金残高が少なく、在庫や固定資産などの資産が多い場合で、借入金という負債が多額で自己資本が利益剰余金がマイナスになっていると、これはかなり危ない会社になりますよね。不動産会社など一定のレバレッジを効かせるのが当然の業種もありますが、リーマンショックのような時はレバレッジが大きく効いている会社は倒産リスクがあると言えます。ストック型の比較的安定的な売上が計上されるような会社ではレバレッジが多めに効かせてもなんとかなるケースもありますが、そうは言ってもやはり借入の水準は会社のリスクを図るうえでは大事ですよね。インチャージ以上で監査チームに入る場合には借入金についてはこのような視点で見ることも必要になります。

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